忍者ブログ
オレオ

2025.04.04 Fri 「 [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

2012.09.24 Mon 「 約束のかたち遙か4 サザキ×千尋
もしもサザキが橿原宮に宝を取り返しに行った時に千尋と逢っていたら。
「おうっ!あの時の超絶格好良い日向のお兄さん助けて!ってな」

うとうととまどろみながら、忘れられない記憶の中に埋もれた、忘れてしまった記憶が見える。

水底にある何かを上から見てるかのように、ゆらゆらと漣のように、揺れて














「カリガネっこっちだ!」

「…本当か?」

「ふっおれの勘だ!」

「………」

橿原宮で彼等は一族の宝を探していた。

無理矢理取り上げられた宝。

別段仕返しに来た訳ではないが、王族だからそんな理不尽が罷り通るとは思わない。

それでは山賊だ。山賊。

忍び込むのは苦労したが、この翼がある。

守備範囲が陸のみの兵に捕まる訳がない。

しかし。

「いたぞっ日向の奴等だ!」

宝があるのは陸。

いつか降りねばならない上、如何せん翼を持つ彼らは目立つ。

「ちっ見つかったか。

カリガネ、分かれるぞ!一族の奴等見たら逃げろと伝えろ!」

「わかった」

バサリ、と二人の翼が空を斬る。

逃げられると血相を変えた兵が足を早めるが、向かい風に煽られた人間が追いつける筈もない。

怒号を下に聞きながら、サザキは宮の奥へと飛んだ。

「サザキ?どこへ…」

「いーから行けって。おれはちょっくら本題を済ませてくっから。

心配すんなって、ヤバいと思ったらさっさとずらかる」

一笑して、サザキは背に山を頂く宮へと向いた。

単純な話、幾ら体裁を取り繕っても後ろ暗い物品を堂々と仕舞う訳がないと踏んだ。

ならば橿原宮の、奥。

王族が住うその場所にあるのではないか。

死角が無い上から見つかるのを恐れて歩いていたが、見つかってしまったらもう同じだ。

矢も鉤縄も届かないほど上空へ飛んでしまえばいい。

依然怒号は聞こえるが、正に何処吹く風だ。

バサ、と大きく翼が風を掻いた。

「っと、ここらかなー」

きょろきょろと辺りを見回す。

予定よりも奥へと来ていたらしいが、立地から見てさしたる問題は無い程度だろう。

兵も王族の住居へはすぐに入れないらしく、怒号は微かにしか聞こえない。

「さぁーってと!何処だ~?」

堂々とそれらしい場所を探してみるが、制圧され難いよう迷う造りになっている。

柱が連なり同じような景色の為、暫く歩いただけで疲労感が襲う。

「ったく……何処だよー…ってか戻れんのかな、おれ」

独りごちたとき、泣き声が聞こえた。

押し殺してるかのように小さくて、幼い声。

サザキはぐるりと見回して、小さく影が揺れたのを認めた。

延々と連なる大きな柱の影。

すぐ横に動けば陽が当たるのに、何故か隠れるように泣いていた。

小さな女の子が抱えた膝に顔を埋め、肩を震わせている。

最初からいたのだろうが、段々声を隠せなくなったのだろう。

サザキの瞳が閃く。

こんなところに、子供。

(王族の血筋か)

あわよくば、宝の在処を知っているかも知れない。

それだけで重罪であるし、それ以前に余計な恐怖心を子供に植え付ける気は毛頭ない為人質になんてとる気はないが、聞き出すならサザキなりの人道にも悖らない。

サザキは出来るだけ視線を合わせるため、膝を曲げた。

「小さなお姫さん?何がそんなに悲しい?」

少女は突然かかった声にビクリと肩を震わせて、涙を溜めた大きな蒼い瞳を円くしてサザキを見上げた。

「…あなた、だぁれ?とりさん?」

「ふっふっふっ違うんだなーこれが。

日向の一族だ。聞いたことあるか?」

少女は考えるように頭を傾げた。

聞いたことはあるが思い出せないらしい。

サザキはそれ以上答えを求めず、黄金の髪を撫ぜた。

「それでお姫さんは何が悲しかったんだ?」

するとまた瞳が悲しみに彩られてく。

「おれはちょーっとばかしここに用があるだけだからな、何やらかしても怒んないぞ?」

その言葉に、戸惑いながら小さな口がゆっくり動く。

「りゅうが、呼べないの。声がきこえないの。

……わたし、みこになれない…」

舌足らずが微かに残る言葉の意味を理解したとき、サザキは絶句した。

龍と、神子。

王家の血筋どころか、直系の娘。

何かはわからないが、口を開こうとした。

その時、幾つもの足音が聞こえた。

時間切れだ。

「やっべ、なあ、お姫さん。

ここの兵に見つからない逃げ道、知ってるか?」

「―――こっち」

手が小さすぎてサザキの指先三本しか握れない。

微笑ましいが、それでは捕まる。

下手すればこの姫にもいらない余波がいく。

この国で、龍が呼べない姫がどういう扱いかなんて考えずともわかる。

泣いていたのも、呼べないことそのものよりも当たりのきつさだろう。

握る小さな手を握り変え、腕に腰掛けさせる。

音を立て翼が翻る。

「しっかり掴まっててくれな、姫さん。道案内頼むぜ?」

「みっつめの角を曲がって!」















「じゃあここでお別れだなー。匿ってくれて助かったぜ」

小さな体をゆっくり降ろす。

うん、と小さく返事した声が含むものに気付いてサザキは笑った。

「よおーし、じゃあこれをやろう!」

サザキの腕に巻かれていた、細かい鎖の二連の腕輪。

それを一連にして、小さな姫の首飾りにする。

「いいの?」

「日向の男がお姫さんにタダで助けられる訳にいかないからな」

わからず首を傾げる少女の頭を撫でる。

「それから、お姫さんが龍の神子なんてやってらんね!

ってなったらこの飾りにお願いするといい」

「おねがい?」

「おうっ!あの時の超絶格好良い日向のお兄さん助けて!ってな」

「きてくれるの?」

「…ああ」

この飾りに勿論そんな効果はない。

けれど、この姫に足りないのはそうやって甘やかしてくれる人間が圧倒的に足りないのだろう。

だから、ひとりで泣く。

「でも、さっきの長い……」

「そうか?じゃあ『サザキ』と呼ぶといい」

思い切り笑った。

もう本当に時間切れだろう。

「じゃあな、可愛いお姫さん」

一瞬、初めてその姫が笑った。

しっかりと見ようと思ったが居場所がバレたらしい。

「姫っ?!ニノ姫がいたぞ!ちっあの日向の……撃て――!」

突然の事態に目を白黒させる姫に構わず矢を射て来る兵を睥睨しながらサザキは飛んだ。

「うわわっ」

が、別の隊が動いていたらしく、丁度サザキの死角をついて火矢が飛んで来た。

殆ど本能で動き、矢を避ける。

それを地上から見ていた姫が青褪めた。

「やっやめて!お願い!だめ!」

「…何故です、姫?彼奴は盗賊です」

盗賊?そんなことはない。

彼は御守りと、誰も言ってくれなかった言葉をくれた。

「ちがう!ちがうわ!わるいひとじゃ、ないもの!

それにあんなのがあたったら痛いもの!」

は、と兵士が嘆息した。

どういう気持ちか、幼くてもわかる。

「それは、龍のお言葉ではありませんでしょう。

お優しいのは宜しいですが、彼奴は咎人。…ご身分を弁えられませ」

姫は、唇を噛み締めた。

くやしい。

せめて龍が呼べたら。

そっと首飾りの鎖を握り締める。

龍を、呼べるようになりたい。

逃げずに、呼べるように。

助けて、でなくて、会いたいと願っても、あのひとは来てくれるだろうか。

会えるのは少し遠くなったけど、あのひとが笑って褒めてくれるなら。

初めての願い事と一緒に、首飾りを握り締めた。
















少し、サザキの意識が浮上する。

逃げるのに懸命すぎたのと、その後の毒矢に塗布されていた毒に苦しんだせいでそんなこと忘れていた。

今ならわかる。

あの小さな姫は千尋だ。

閉じた瞼の向こうで、ちらりと光が揺れる。

誰かなんてすぐわかる。

日向の男衆がこんなにじっくり自分を眺めるなんて有り得ない。

気付かれないよう少しだけ笑って、その影を抱え込んだ。

「サザキ?!やだ、起きてたの?!」

「いんやー?

おれの姫さんが淋しそうにしてたらどんだけ眠くても起きるって」

上半身だけ抱え込まれた状態では辛いだろうと、サザキは片手で千尋の肩を抱え込み、膝を掬い上げ横抱きにして自分の上に乗せ、抱き直す。

「やだサザキっお、重いでしょ!」

「姫さんひとり乗っかったところで痛くも痒くも無いさ。

んーむしろ楽しいくらいだぜ?」

最後の科白に千尋は疑問符を浮かべたが、サザキの笑顔を見て千尋は肩口に顔を埋めた。

群衆のざわめきに似た波音に、中つ国奪還のため戦っていた日々を思い出す。

「なあ、姫さん」

「なぁに?」

「本当に良かったのか?」

途端、パン!と千尋が上半身を起こして埋めていたのと逆の肩を叩かれた。

「ひ、姫さん……、今の当たりどころ悪くて結構痛……」

「サザキのばか!

そりゃ…みんな元気かなーとかっ顔見たいなーとかはあるよ!あるけど!」

パチンと小さく叩く。

痛みはなく、はずみで当たったかのような。

「サザキと離れ離れになるのだけは、いや」

消えるように言って、もう一度千尋は肩口に頭を乗せた。

「欲しいのは王位でも国でも名誉でも富でも、そんなものじゃ叶えられない宝物だもの」

「姫さ……」

叩いた肩口を日焼けをしない指先で撫でる。

痛かった?と尋ねる千尋にサザキは嬉しさを誤魔化すように溜め息をついた。

「いやーやばいかも。

何せ武勇を語らせたら今の中つ国に姫さんの右に並ぶ猛者なんていないからなー」

「も…、サザキ!」

サザキはもう一度身を起こしてぱっと小さく振り上げた千尋の手を掴んで、体を起こした。

斜めに乗せられていた為千尋はサザキの膝の上に座る形になった千尋をむき出しの腕が抱き締める。

もう、迎えにいくなんて言わない。

常世の国にも中つ国にもやらない。

財も栄誉も名声もここに来て培った全ても、不自由のない暮らしすら擲ってこの腕の中が宝と言ってくれる彼女だけは、誰かに盗まれる訳にはいかない。

「知らないからな、千尋。

やっぱり海賊なんていや!なんて言っても離してやれないぜ?」

「良いよ。サザキは私のために良い海賊になってくれるんでしょう?」

悪戯っぽく笑って、千尋は細腕をサザキの背に回す。

もう、何かに千尋が願をかけなくても、全部まるごと叶える。

だから、いつでもそれが聞けるほど近くに。

「離さないでね、サザキ」

まずはそれを叶えるとばかりに、抱き締める腕に少し痛いくらいに力を込めた。


PR
COMMENTS
SUBJECT
NAME
EMAIL
URL
編集用パスワード
COMMENTVodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字

カレンダー
03 2025/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30
リンク
カテゴリー
フリーエリア
最新コメント
最新記事
プロフィール
HN:
美菜
性別:
女性
自己紹介:
乙女ゲー好きー!こっぷれ好きー!
バーコード
RSS
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
P R
忍者アナライズ
カウンター