ED後。望美がスキスキーな銀。
「愛してます」
「神子さま」
許してあげない。
怒ってるんだから。
「こちらを向いて下さらなくても構いませんから、聞いてください」
意地が気になるのに気にならない振りをさせて聞きたくないと耳を塞ぐこともさせない。
耳を塞いでしまえば相手にしていると思われてしまう。
それこそ、この異世界の貴人(あてびと)の思う壺だ。
「愛してます神子さま」
そう言えば許されると思って。
ねぇ、それ、許しの言葉じゃなくて愛の言葉なの。
そんなの許して欲しい時に使わないで。
「愛してます」
何より嬉しかったその言葉を聞きたくなくて体を少しずらして遠ざける。
「……っ」
「愛しています、貴女だけを」
両腕で遠ざけた分を取り戻して有り余るほど抱き寄せられた。
殆ど腕の中だ。
これじゃ、いつもと変わらない。
「愛してることだけ、信じてください」
耳元を掠めるように囁く。
心が騒ぐのは、言葉のせいじゃない、この声や、声の主が愛しいからじゃ、なくて。
いやいや寧ろ騒いでなんか、いない。
「愛してます、神子さま」
抱き寄せていた腰を抱き上げ、銀の膝の上に乗せられた。
「愛してます」
狡い。
掠めるように言いながら、あたしの心をどんどん取ってく。
幾らあっても足りない。
「…神子さまだけを、唯一愛してます」
ほら、もう、ずっと取られ続けたから。
「……銀ずるい。あたし、怒ってたんだよ」
無意識のうちに過去形になっている。
「ですが私の不実を思っていらっしゃるのでしょう?
ならば私には神子さまだけとお伝えするのが一番かと。
言葉では足らないほど愛してます」
「も、もういいよ!」
突然の大声に一瞬驚くとふわりと笑顔になった。
「わかって頂けたようで嬉しく思います」
ちゅ、と赤くなった耳に小さく口接けて言った。
何か言ってやろうと思ったが、言葉だけでなく本当に嬉しそうな銀を見て怒る気が丸ごと殺げてしまった。
銀は悪くは無かった。五限半ばに学校まで望美を迎えにきたとのメールが届いた。
もう一限あるからと返せば、ならば待つとの返答。
すぐ側にいるとわかっているのに走っていけないのが悔しくて辛くて、何より会いたくて。
やたらと長く感じた授業が終わり放課の掃除を友人に頼み込んで代わって貰い、漸く校門まで走って行くと、想い人の回りには女子生徒の人だかり。
端正な顔に柔和な笑み。
それを決して裏切ることない柔らかな物腰の態度。
それは完璧に、理想の大人の男だ。
人込みを掻き分け、銀の腕を取って挨拶も正面にしないまま、銀のマンションの部屋へ行き、苛々と拗ねていた。
ただ、自分が嫉妬しただけ、と。
自分は子供じゃない。
銀は玩具じゃない。
わかっているのに、まるで玩具を取り上げられたように拗ねた自分にも苛立った。
銀は怒れば良かったのに、と今更思う。
そうすれば子供のようだったことを反省出来たのに、謝れたのに、銀はただ愛の言葉を紡いだ。
それが、子供のようだと理解してただけに惨めにさせ、意固地にさせた。
「申し訳ありません神子さま」
「謝らないで。あたしが……」
いいえと緩く首を振ったのに合わせて、名と同じ色した髪が揺れた。
「神子さまは傷ついてらっしゃったのに、私は嬉しかったのですから」
ぎゅ、と銀の腕に力が込められる。
「神子さまが妬きもちを妬いてくださったのが嬉しくて。
力一杯腕を取ってくださった神子さまが、可愛くて愛おしくて」
愛してます、ともう一度告げた。
臆面もなく愛の言の葉はまだ言えないから、と。
告げる代わりに、首に腕を絡げて抱き付いた。
惜しむらくは、一連の二人を惚気と評する誰かがいないこと。
必要は、無いのだけれど。
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