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オレオ

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2012.09.24 Mon 「 朱憶白月遙か3 ヒノエ×望美
最初の時空で恋をしたヒノエの最期のときの夢。
「そんなことで、泣いてたの?」

あか、が世界を塗り潰してゆく。

否、焼き尽していく。

知っているところなのに。

唯一の居場所なのに。

どうして?

どうして?

煤で汚れ、年の差よりも大人びた親友が、その世界で微笑う。

「貴女だけでも生きて欲しいの」

嫌、嫌。

好きって言ってくれたじゃない、側にいさせて欲しいの。

首を巡らせれば、恋をしたひとが、同じ笑顔を向けて言葉よりも瞳がそれを伝える。

「望美……」

一際大きな音を立て、焼けた梁が――――――………‥‥‥




「ぃ…っやめ……っ!」

望美は叫んだつもりだった。

が、息を飲んだだけで大きく空気を震わせることはなかった。

喘鳴のような呼吸を繰り返し、冷えた空気を体と頭に取り入れることで覚醒させる。

体を起こして身を折った望美の視界が認識したものは、闇の中で白く浮かぶ掛け布団だった。

「ゃ、………ぃや…っ」

恐怖に塗り潰されそうな理性で口許に布団を押し当て唸った。

隣りで眠る親友を起こしてしまいかねない。

次第に落ち着いていく呼吸に、過呼吸になりかけていたのだと気付いた。

濡れた視界で辺りを確認すると、闇の中で小さく上下する朔の姿と、月灯りに浮かぶ障子があった。

望美が生まれ育った世界よりも濃い闇は恐怖の対象になっていたが、今は夢の世界と真逆なほどの静けさを伴っている闇色は安堵をもたらした。

一度朔を見て震える手を叱咤しながら障子に手を掛け、部屋から出た。

怖くて仕方なかった。

大好きなひとたちの命が無造作に消えてゆく様が何度も夢に現れる。

何が正しくて何が間違っているのか。

自分の選択ひとつで左右される誰かの命が重い。

逃げたかった運命からそうしないのは、何があっても救いたいひとがいるから。

だけど。

「望美……?」

「………っ」

突然降った声音に、夢で、忌まわしい過去で呼ばれた名前が重なり、震えた。

思わず振り向きそうになったのを全力で止め、涙を拭った。

「ヒノエくん、どうしたの?」

笑え、と顔の神経全てに命令をかけ、十七年付き合った筋肉やら神経は従順にその命令を聞いた。

にこりと笑って近付いたヒノエに内心で胸を撫で下ろした。

ぴたりと、十分な間隔を置いて止まる。

「おれはね、望美。お前の花のかんばせが好きだよ」

科白は普段と変わらない。

だが、月灯りに照らされた顔と、声に含まれる表情が酷く真剣味を帯びている。

「「らしくない」って言えるほどお前のことは知らない。けど、」

ヒノエが踏み出しぎしりと板間が軋む。

赤くなった目を見られたくなくて腰を浮かせたが、視線は交わるのを通り過ぎる。

交わらない視線の代わりに、夜風で少し冷えた体が望美を包む。

「泣きたいときくらい、誰か頼っても良いんだぜ?」

「………っ」

止めたのに。

頑張ったのに。

どうして、貴方は。

「置いてかないで……」

行かないで

逝かないで

抱き締めているヒノエの、別の時空での最期を思い出し粟立つ。

「ひとりで闘えるほど強くないよ……」

縋るように着物にしがみつく望美を抱き締める腕に力が籠る。

「そんなことで、泣いてたの?こうやって、ひとりで……」

「だって…っ」

反論しようとし、今度は濡れた瞳を隠すことなく顔をあげた。

が、反論は喉で止まる。

泣きそうなヒノエが視界に広がった。

「誰かに頼ろうと思わなかったかい?」

「だって……」

「ひとりになんてさせやしないさ」

「……だって……」

ひとりで生き残って、ひとりでここまで来たのは、他ならない自分なのに。

言葉にならない呟きを知らないヒノエはそれでも笑った。

「望美はおれをひとりにするの?」

「あた……っし、しないっ」

言い切って音量を気にして口を押さえたが、ヒノエはただ笑みを増した。

「お前がおれをひとりにさせないのに、どうやってひとりになる気だい?」

「ぁ………」

「お前がひとりの時にはおれが必ず側に行って、ひとりのときなんて思い出させないよ」

抱き直した腕に漸く安堵と存在を感じる。

ああ、やっぱり。

(ヒノエくんはヒノエくんなんだ…)

これで最後の時空にしたい。

だけれど、喩え何度巡っても何度でもこのひとに恋をするのだろう。

「大丈夫かい?望美」

「ん……もう平気」

ヒノエが見上げた空は深夜の濃藍よりも淡い色になっているが夜明けまで時間は十分ある。

「なら少し休んだ方が良い。

寝不足でお前が倒れたら譲が卒倒しかねないからね。

野郎の看病なんて御免だね」

「そんなの、倒れてもしない癖に…」

いつもの望美の返し方にヒノエは気付かれないように安堵の溜め息を洩らした。

「望美……」

部屋へ戻すために腕の拘束を緩めたが、ヒノエに体を預けたまま動く気配はない。

「望美?」

「……ん…ぉき、る……」

呟いたきり、望美はそれを実行する動きを見せない。

肩口に当たるゆっくりとした吐息は眠りの深淵に舞い降りた証拠。

「……マジか……」

気を張っていたものがふつりと緩んだのだろう。

眠りも浅くなるほど何かを恐れていた望美を可哀相だと思う。

だが蛇の生殺し状態の自分も可哀相だとも、また別のところで思う。

それも、彼女の眠りを妨げる理由には瑣末なことだ。

「本当に譲が卒倒しそうだな」

風に呟きを溶かし、羽織っていた上着を望美にかけ、ゆっくり動いて壁に背を預けた。

一仕事終えた気分で明けゆく空を見ると、角度の関係で見えなかった月が見えた。

神職だが、今は神よりも月が今の願いを叶えてくれそうだ。

どうか、

藍闇を優しく照らす、月のような彼女の夢路には、彼女を脅かす一切が無きよう。

(違えたら、熊野水軍が相手だぜ?)

悪戯っぽくひとつ輝く月読尊へと心中で呟いて、ゆるりと瞼を伏せた。

腕の中で眠る少女の夢路へと辿りゆくために。




















↓おまけ。


翌朝。

「な、何やってんだっ」

ふと響いた大音声。

寝入っていたヒノエはその声で目が醒め、声の主を見上げた。

わなわなと自分を指差し、何か言いたげに口を動かすが言葉にならないらしい譲。

「五月蠅いな……」

覚醒しない視界で辺りを確認すると、座って寝ていたらしい自分の腕の中に、望美。

一瞬惚けたがすぐに事態を飲み込み、本当に抱き締めるだけで一切触れなかった自分を誉めたたえた。

男もやれば出来るもんだ。

だが出来れば御免だ。

「何…っ何があったんだっ」

「五月蠅いな、望美が起きちまう」

こつんと頭を壁に預けると、数時間振りに動かした体が軋む音を聞いた。

「ん…ぅ、」

「あ、起きたかい?おはよう、望美」

瞼をゆるゆると持ち上げ、焦点が定まらない瞳はヒノエを映し、ぱしぱしと数度瞬きをした。

「―――――ひ、ヒノエくんっ」

ひっくり返りそうな望美の声に譲の肩がぴくりと揺れた。

「先輩…?」

譲の声にはたと自分の体勢を思い出す。

未だ抱き締められたままだ。

「え…あっ譲くん!えっと違うの、あたしが悪くって…」

「~~~っ」

要領を得ず、説得力の無い言い訳をする望美と、望美の努力を何処吹く風で援護しないヒノエの態度。

それでヒノエの予測通り譲が卒倒したのは、言うまでもなく。





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