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オレオ

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2012.09.24 Mon 「 希求遙か無印 泰明×あかね
天あか←泰
天真とあかねがくっついて現代に帰ったあと。泰明の片想い
「何故、…京に残った?」

あいたい、と切望して聞こえるのは、いとしいひとの声ではなく、水音だけ














龍神の神子たるあかねがただひとりと選んでから、何人かの八葉が京から姿を消した。

二人は故郷へ還り、新天地へと決めた。

一人は友を助けると決め土御門邸と往復の毎日の為以前のようにとはいかない。

あとは己の仕事へ戻り、八葉になる以前の生活を取り戻しつつある。

地の玄武――泰明を除いて。

彼の師より朝廷には物忌みとされている。

周囲も京で起こっていた異変を断片的に見聞きしている。

また泰明の力の強さも周知の事実の為、その分影響が大きいのだろうと納得している。

直に、その言い訳も限界は来るのだが。

北山の奥深く、安倍家の庵で泰明はほろりほろりと涙を零していた。

あかねを見送った後、糸が切れたようにただ涙を流して過ごしていた。

出会った頃から別れるまでのあかねを思い出し、記憶を抱きしめる。

本当に抱きしめることは、もう永遠に叶わないから。

二回だけ、あかねの感情が流れ込み、水鏡に映したように自分も涙を流したことがあった。

その時は不思議そうなしながらもあかねが自らの衣で落ちるそれを拭ってくれた。

だが、自分の心のままに初めて涙を流す時は彼女はいない。

一生懸命に爪先立ちをして、なんだか子供みたい、と笑いかけてくれることもない。

この声が、指先が、心があかねに届くことは、もう無い。

あかねしか、心を向けて欲しいと哀切したことがない。

だから、この苛立ちにも似た遣る瀬無さも、波のような激情も、その後の虚無感もどうしていいかわからない。

恋と呼ぶには哀しくて、愛と呼ぶには暴力的なこの心の終焉はどこだろう。

あかねを忘れて終焉るなら、いっそこのまま風になれたら。

す、と呪いが取れた顔を撫ぜる。

流した涙が指先を濡らし、空気が冷やす。

それ以上に心が凍える。

別段なりたいと願った訳でもない人になっても、……辛いばかりだ。

きしり、と板間が鳴る音が泰明の耳に幽かに届いた。

「こっちかなー…泰明さーん…?」

緩慢に首を巡らせると、丁度破顔し緩む空色の瞳とかち合った。

「あっ泰明さん!大丈夫、ですか?」

欄干にもたれ掛かる姿に倒れているのかとドキリとしたが、思っていたよりも血色は良い顔色に、詩紋はほっと安堵する。

「鷹通さんたちから泰明さんが出仕してないって心配してたんですよ?

だから僕、お見舞いに」

果物と、手製の菓子が入った籠を差し出した。

春空色のまっすぐな瞳と、柔らかな金の髪。

あかねと同じ世界から来た彼の存在の為か神子の資質か今はわからないが、あかねに会った当初好ましくなかった事を思い出す。

「詩紋は何故……」

数日話すこともしていなかったせいで声がかすれた。

声量も余りに無い。気づいた詩紋は泰明の側までにじり寄り耳を傾けた。

「何故、…京に残った?」

私は、とぽつりと静謐の中に泰明の声が溶ける。

「私は神子にあいたい。

敢えて別離を選んだお前がわからぬ…」

あいたい。

そう口にしたらもっとあいたくなった。

なのに耳に届くのは衣擦れと、涙の水音、それから煩いくらいの静謐だけ。

元々この世界にいなかった筈なのに、この世界からあかねが切り取られたようにどこか虚ろで色褪せた。

あんなに響いていたあかねの心はもう響かない。

それだけで、こんなにも静かで、暗くて何も心を掠めない。

それきり話さなくなった泰明に、詩紋は刺さるほどの想いを痛感した。

「泰明さんは…あかねちゃんがすきだったんですね」

自分も抱いた淡い恋心。簡単にこの道を選んだ訳ではない。

綺麗な景色を見た時、美味しいお菓子を作った時、眠れない夜。

あかねを思い出して切なくなる。会いたいと願う。

それでもまだ帰れない。

…帰らない。

「僕は、あかねちゃんに会えたとき、昔みたいに守られるんじゃなくて守りたいんです」

かつて宝珠が埋まっていた手の甲を撫でた。

「…胸を張って、あいたい」

あかねを強いと思った。

神子だから、年上だから、あかねだから。

ただ普通の、十六の女の子なのに。

心があかねに寄りかかっていることは気づいていたから、せめてあかねの側にいるために天真に投影して。

自分でも呆れるくらい弱かった。

この京でこの髪と瞳の意味をわかった上で、為すべきことをして、次にあかねに巡り逢った時。

「あかねちゃんに…好きだったって言いたいんです。

今のままじゃ駄目だけど。…今の泰明さんだって、そうでしょう?」

「会う事は叶わぬ」

「僕が連れていきます」

泰明が僅かに目を見張り、詩紋を見た。

今日初めて、目が合った気がした。

「僕、龍神様が聞いてくれる位頑張りますから。

僕たち一度時空越えてここにきて、あかねちゃん達は帰ってるんです。

何か方法ありそうですよね」

それに、と言葉を繋ぐ。

「あかねちゃんが僕たちにくれたもの、ちゃんと残ってるじゃないですか」

ふわり、と風が吹いて、凪いだ。

僅かに煽られた髪が余韻が無くなった頃、ね、と詩紋は泰明を見て、安堵したように詩紋は笑みを深めた。

行きますね、と詩紋は別れの挨拶の代わりに置いて帰った。

さくさくと元来た道を戻る詩紋の頭上にふっと不自然な影が差した。

だが、詩紋は恐れる事もなく空を仰いだ。

「天狗さん、泰明さんの居場所教えてくれてありがとうございます」

「あれはあれで可愛げがあって良いんだがな、つまらん」

軽やかに応えた声に詩紋は返答に困ったように、でも嬉しそうに笑った。

「大丈夫ですよ、もう」












詩紋が離れたあと、徐に泰明は立ち上がった。

さわ、と森林の匂いを孕んだ風が頬を撫でる。

もどかしいような苛立ちも、波立つ心内も変わりはしないが、陽光に光る木々が少し柔らかく揺れる。

詩紋が言った事はただ彼の優しさであり、慰めにしかならないと知っている。

ただ、「もしも会えたら」と考えていなかった。

もしも会えたら。

想いは告げない。

けれど幸いを願っていたことだけは。

常なら有り得ないと一蹴することに心を傾ける。

そして愛しさと哀しさに目を閉じて、やさしいまどろみに意識を沈める。

沈む瞬間に、泰明さん、と記憶が呼ぶのが聴こえた。
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