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オレオ

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2012.09.24 Mon 「 たましずく遙か3 弁慶×望美
望←弁(?)
怨霊は倒してこそ救っている。けれど傷つける剣を握っている。
「………そんなに哀しいですか?」


ひらひら



きらきら



ひらひら



きらきら


落ちてく形を持たない水晶は、陽光を反射して、地面とぶつかって、砕けて、染みた。

清浄さが、泣いていると気付かせるのに姿を見ても尚時間を要した。

「望美さん……?」

「弁慶さん………」

何故、殺そうとするのではと疑わず、無防備なまでに振り向くのだろう。


笑顔でひた隠して歩み寄った。

「泣いてしまっては花の顔(かんばせ)が台無しですよ」

座り込んでいる望美にあわせて膝を折って指で涙を拭う。

「雀、ですか?」

「突然落ちて来て……」

恐らく寿命だったのだろう、怪我ひとつ無いが、ひくりとも動かない。

「お墓を作りましょうか」

こくんと頷いた拍子に涙が舞った。

雀が突然落ちて死んだと、驚きもあってか涙を流す彼女と、瞳を剣と同じ色にひらめかせて舞うように軍中に飛び込む彼女は、余りにも結びつかない。

「弁慶さん」

折った膝に雀の亡骸を抱えて土を掘る望美を手伝いながら、座ってる分何時もより近い場所でその声を聞いた。

「あたしに治療の知識があれば、何とか出来ましたか?」

答えは、「出来ない」。

寿命は如何ともし難い。

仮令神たる龍神も、その龍神の加護を一身に受ける神子も。

だけれど出来る出来ないの答えは相応しくない気がした。

だから、問うてみようと思った。

「……そんなに哀しいですか?」

名も愛着も無い小鳥一羽の、死が。

「怨霊を倒す貴女が」

傷ついたように揺れた瞳から、酷薄そうに歪みかけた唇を布の影に隠した。

「……みんな…、白龍も、朔も、敦盛さんも言うんです。

あたしの浄化の力が、怨霊に対する唯一の救いだって」

泣きたいの堪えて望みは懸命に笑おうとするが、声が涙に濡れている。

「怨霊が本来人なら、生きてる人を傷つけて平気な訳無い筈です」

だから。

無言の接続詞を、涙を拭う動作で聞いた。

「最期だけ、辛いの、あたしだけが受け止めれるんです」

そっと目を伏せた。

それは、悪く言ってしまえば只の貧乏籤。

怨霊を悪しきものと割り切り倒さんとするには優しすぎる人。

そういう意味では最も相応しくない人種。

だけれど意志の強い彼女を突き動かすのが、仲間の命ならば龍神の神子としてならばこの上なく適任。

「なら、もし僕が怨霊ならどうしますか?」

ぴたりと表情が凍りつき、直向な笑顔が掻き消えた。

「僕が怨霊なら、」

ざあ、と風が木々を、木の葉を、髪を撫でる。

「救って(ころして)くれますか?」

言い終わらないうちに耳のすぐ近くで乾いた音が打ち鳴らされた。

「……っ莫迦!」

小鳥の亡骸を抱いた暖かさと同じ温度で叩いて、小鳥を悼んだときと同じ涙で泣いた。

「莫迦に…っ莫迦にしないで!そんなことっ!!」

彼女の物差は各々の大小ではなく、そのものの価値。

小鳥の命と、人だったものの命は等しく重い。

「そんなことっあたしの命に換えてもさせない!」

命と同じ温度で触れて、命と同じように泣く彼女が向ける想いは、命と同じ重さなのだろうか。

「あたしが…守りますから…っ!」

氷のような想いが、春に触れたかのように温度を幽かに持つ。

春は、彼女の手。

声を抑えて泣く彼女の瞳から溢れるのは、自分の冬最期の名残雪。

零れ落ちて、砕けるのが哀しかった。

「有難う、御座います…」

彼女の手の間から零れた珠雫を手に受け、温度を持ってまた春となる。



珠雫は、魂雫。


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