36935(弥勒珊瑚)キリバン小説。
弥勒珊瑚でしたが詩あか指定でしたww
「ならあたしからの誕生日プレゼントなら良いのね」
To:あかねちゃん
Sub:No Title
今からウチ来れる?
To:詩紋くん
Sub:Re:
行けるよ!
でも突然どうしたの?
暫くして、携帯を見なくてもわかるようにと設定した甘ったるいラブソングが、メールの着信を伝える。
「『来たらわかるよ』……て」
「わぁ、詩紋くん素で押して引くのね」
長い艶やかな髪を耳にかけて笑顔で言う蘭をあかねはじとりと睨んだ。
「ねぇ蘭。あたし、今貴女といるの」
「そうね、知ってるわ」
「詩紋くんに届いたあたしからのメールは携帯はあたしのだけど蘭が打ったよね」
腑に落ちないあかねに蘭は至上の笑みを浮かべた。
「でも、行きたいでしょ?」
うっと詰まって溜息を吐いて、すっくと顔を上げた。
「ねえ蘭っ」
動作が多くて飽きないわ、などと考える蘭には気付かず、あかねは服を抓んだ。
「変じゃない?」
「変だと思う恰好であたしと会ってたの?」
悪戯半分どころか全部悪戯心で蘭の質問にあかねはぶんぶんと首を振った。
「違うけどっ」
「そうね、これなんかどう?似合うわよ?」
薦めようと思った矢先のメールの着信に忘れかけていたが、近くにかかっていた服を手に取った。
少しトーンが落ちたブラウンに胸の下辺りで裾が細長いリボンがあしらわれているキャミソールをあかねの体に当てた。
「うん、良いじゃない。その白のスカートと良く合うわ。
店員さーん、コレに合うカーディガンか何か無いですかー?」
「ちょ、蘭っ?!」
にっこりと向けた笑顔は、美少女なだけに迫力があった。
「ほんとにもう…っ」
淡い赤のカーディガンを持って来られ、一度あかねは怖気づいて断った。
それに蘭は
「ならあたしからの誕生日プレゼントなら良いのね」
と言ってレジへ向かった。
確かに誕生日はすぎたところだが、しっかり祝って貰った上、学生の、同い年の女の子から貰う金額のものではない。
慌ててなら自分が払うと主張したあかねが見たのは三度目の笑顔。
「あたし、そんな貴女が好きよ」
全ては蘭の計算のうち。
その彼女と、そんな小賢しいことを考えもしない天真が兄妹なのだから世も末だ。
そして今。
着ていた服は袋に詰めて貰って蘭が夜届けると言って街中へ消えた。
回想しながら、随分と馴れた家に入るべく、インターホンを鳴らした。
「いらっしゃいあかねちゃん」
金色の髪を揺らして空色の瞳を細めて、詩紋はあかねを迎え入れた。
「どうしたの今日。明日会えるのに」
「今日桃と梨のタルト作って明日持って行こうと思ったんだけど、出来が良くって早く食べて欲しかったんだ」
いつも、そう。
お菓子作りが上手くいった、お互い好きなアーティストのCDを買った。
ならば一緒に食べよう、一緒に封を開けて聴こう。
小さな幸せがある度、お互い逐一報告して会っているから。
大学生と高校生とは思えない頻度で会っている。
この関係が堪らなく愛しい。
「……ありがと」
「上がって?フルーツティーはオレンジで良い?」
「おいしーっ」
ふるふると肩を震わせて、持てる全てを使って表現するあかねに詩紋はくすりと笑った。
「嬉しいな、そこまで喜んでくれるなんて」
「ううんっ、足りないくらいっ」
甘いケーキに、オレンジの香りを含んで砂糖を少しだけ入れた紅茶が良く合う。
「ふあ~……幸せーっ」
「好きなお菓子作りを大好きなあかねちゃんに喜んで貰えてぼくも幸せだよ」
「……っ」
音がしそうなほど顔を赤くしたあかねはぎこちない動作でフォークを置いてカップの縁に口を付けた。
「…あれ?」
「もうそれカラでしょ?」
肩で笑いながら詩紋はちょっと待ってて、と紅茶を淹れ直し始めた。
紅茶を淹れる動作が柔らかで、でも陶器を扱う手は随分と骨ばってきている。
詩紋をじっと見つめてる自分に気付いたあかねはタルトに乗っていた梨を頬張った。
カップを手にはい、とあかねの前に差し出した。
「あ、ありがと」
恥ずかしさの余韻で微かに顔が赤いあかねの手の中に収まる筈だったカップはつい、とUターンをした。
「ねぇ、その服、ぼく初めて見るけど」
「これ?さっきまで実は蘭と居て…蘭が見繕ってくれたの」
変かな、と首を傾げるあかねに詩紋はふわりと笑った。
「凄く可愛いよ」
でも、と続けた詩紋の科白にあかねの表情が見て取れる程曇っていくあかねの頬に詩紋は指を添えた。
「可愛いから、この姿を最初に見た蘭さんにヤキモチ妬いちゃうなぁ、ぼく」
「やき……」
「服が栗と林檎に、髪が桃で、唇は梨味だね」
ちゅ、と当てるとうに口接けて至近距離で詩紋は胸下のリボンの裾を掴んだ。
「まるでプレゼントだよね」
「たっただの飾りだよ!」
「うん、ラッピングだからね」
くすくすと笑う詩紋にあかねは頭のど真ん中を過ぎる予感を打破するべく、反論めいたものを連ねるが、根源にある愛しさが本気で拒否することを許さない。
「秋の味覚を楽しむのに、ラッピングはいらないよね?」
返事は、梨味の口接け。
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