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オレオ

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2012.09.23 Sun 「 意地の許容遙か無印 友雅×藤姫
6巻友雅失踪その後。
「姫は自室かい?」


蘭との取引で桜の下で恋に破れて泣く女性を救う為、墨染へ赴いた友雅が姿を消して五日後。

暫くの療養の後に土御門殿を訪ねて最初に声をかけられたのは、屋敷の主の愛娘ではなく、

異世界からの神子と八葉の二人だった。

「――――友雅さんに怪我とかなくて本当に安心しました」

「心配かけてすまなかったね、神子殿」

「ったく、手に負えねえなら言ってけっての」

「て、天真先輩…」

「心配していたのなら素直に言うものだよ、天真」

「だっれっがっだっ」

隣りでやっている応酬も、安心感も伴って聞こえ、あかねの口から小さな笑い声が聞こえた。

あ、と思い出したかのように友雅を足りない背丈分見上げて

「イノリくんが息子なんだってね」

と言うとくすくすと笑った。

げんなりとしながら自分の奮闘を交えて身振り手振り、あかねたちに伝えていたイノリを想像して、口の端をあげた。

「そういえば藤姫は…?」

聞かれ、あかねは少し困った風情でそれに答えた。

「あのね、友雅さんが来ること教えてくれたの藤姫ちゃんなんですけど…何かね、奥に籠っちゃったみたいで」

顎に人差し指をあてて言うあかねは可愛らしいものだが、聞いた自分はさぞ間抜け面なのだろう。

いつも然したる用もなく赴いた際でも、何か用事をこなしていたとしても可能ならば生真面目にもきちんと向き合っていてくれた小さき姫が。

生来の性分もあるのだろうが、姉のような柔らかな苦言を言っていたが嫌悪感は持っていなかった筈だ。

爪先を滑らかに方向転換させた。

「姫は自室かい?」

「えっ、行っちゃうんですか?」

友雅の復帰報告の為に他の八葉も集まることになっている。

「もうすぐ他のみんなも…」

「すぐに戻って来いよ?」

言いかけたあかねを遮った天真に、応答の変わりの肩越しの笑みが返ってきた。

すぐに御簾の向こうへと姿が消えた友雅を半ば呆然と見送ったあかねはふと我に返ったように天真を見た。

「天真くんっ、藤姫ちゃんが友雅さん来ても呼ばないでって……」

「いーんだよ、これで丸く収まるから」

「だーかーらー…」

訳がわからない、という顔をしているあかねを見て説明してやろうか、と口を開けかけたが、然程この手の話に聡くない事を思いだした。

勢いついでに人差し指を出してあげた手をぽん、とあかねの頭の上に置いて、ため息を吐いた。

「天真くん?」














藤姫は、文机に向かっていた。

文字を書き連ねる筈の和紙は部屋に籠って暫く経つと言うのに白さが広がっている。

しょり、しょりと墨を摺っても幾らの精神統一にもならない。

そもそもこうして籠っていることに悩んでいるのだから、此処にいる以上、何をしていても手につかない。

溜め息と一緒に頭を落とすとさらりと黒髪が一筋落ちた。

いつも通り、あかね達と共に会えば良かったのだ。

そうすればこんな気持ちが重くなることもない。

顔を合わせるのが嫌だと思ってしまった。

今日会わなければ、失踪していたことについて心配した、だの言わずに済むと思った。

一本気な性格が災いして靄が溜まる。

会うのが嫌だった。

何も言わずに姿だけ消えて失せた友雅に。

『心配した』など言えば、怒っていることを何処かに放り投げて嬉しがってからかってくるひとなのだから。

だから、

『心配した』と言ってやるつもりなど、毛頭無いのだ────。

きしり、と床板が鳴ったのが聞こえた。

「────神子さま?」

「私だよ」

「────っ」

低くて不意打ちで聞けばぞくりとする、甘い声。

「と、もまさ……どの…」

驚いて震える声には気付かない。

気配がくすりと微笑った。

「やれやれ、忘れられてしまったのかと思ったよ」

その科白でついさっきまでの感情を思い出した。

「っ、少しは学習してくださいませ、女の方を無暗矢鱈に信用なさいますからこのような事になるのです」

倹がある。

これだから子ども扱いされるのだ。

「手厳しいね」

「当然ですわ、このようなことが続けば神子さまを守って頂く八葉として困りますもの」

「機嫌を損ねてしまったようだね…」

ふむ、と柱に寄り掛かりながら考え込む風なのが御簾越しに見えた。

「藤姫殿は心配してくださいましたか?」

「なっ…、わたくし心配などしておりませんわ…っ!」

悪びれる風がない。腹立たしい。

けれども、失踪する以前との変わらなさが、無事戻ってきたのだと感覚が認識し始めた。

「……このような事お止め下さい…。

誰かに、神子さまのお耳にいれたくなくば、せめて藤に一言申して下さいませ…」

瞳と声に涙が混じる。

袖で顔を押さえているから見ることは叶わないが、御簾を開ける音がした。

「それで貴女が泣くことが無いのならば、出来る限り」

頭を大きな手が撫ぜた。

「な、泣いてなど…」

おりません、と言おうとしたが、声が喉で潰された。

唯の意地っ張りだが、それでも肝が潰れそうなほど心配した、など言わない。

だから。

「おかえりなさいませ、友雅殿…」

帰ってきてくれて嬉しい事の意思表示くらいなら、意地も許すだろう。




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