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オレオ

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2012.09.22 Sat 「 Last Love Song薄桜鬼 沖田×千鶴
沖田の労咳発覚後、世話をする千鶴を近づけたくない沖田。
「Timeless sleap」の対みたいな。
「千鶴ちゃんさ、僕に構うのの止めなよ」


「や、千鶴ちゃん」

可愛く声音を作った沖田に千鶴は絶句した。

「や、じゃないですっ!寝ててくださいよぉう!」

ぐいぐいと沖田を部屋に押しやろうとする千鶴の手を掴み、やんわりと離した。

「だって体鈍っちゃうんだよ、稽古くらいしたいなぁ」

空気に触れ、霧散した沖田のぬくもりにちくりと胸が痛む。

沖田が自分に触れないようにしていると気付いたのはいつだろう。

「今日は元気なんだよ?」

「その元気なときに体力目一杯使ってどうするんですか。

その体力で治しちゃってくださいよ。

何かお好きなもの作りますから。ね?」

しょうがないなぁ、と笑って、沖田は千鶴と部屋に向かう。

「でも千鶴ちゃんが作るものならなんでも好きだよ」

有難う御座います、と笑顔をつくる。部屋に入った後は山崎に任せ、千鶴は廚に向かった。

「………っ」

指先が震える。

沖田の病を知ってからも、知ったからこそ千鶴は沖田といた。

都合悪いことや、辛いことを隠すのが上手そうだから、些細な変化も見逃すまいと。

出来るだけ長く、沖田に現し世にいてほしくて。

剣客としての沖田に、それがどういうことか知った上で、それでも。だから気付かなかった。

仄白さを超えて青くすらある顔色に、ひたりと忍び寄る死、に。

新選組に身を置いているだけとはいえど、以前の生活よりも死はずっと近い。

それでも、死の恐怖に震えて、喪失感に圧され、それを超える煩雑さに身を任せるうちにいつか乗り越えられる。

けれど彼は違う。

生きている。

生きているから、いつかわからない、けれど確実に早回しで訪れる喪失の気配に震えるしかできない。

抗う為に、笑顔をみせるしかできない。

震える指先を見る。

ゆらりと視界が揺れる。

反射的に擦りそうになって、すんでのところで止めた。

擦って赤くなれば沖田は気付く。

袂の裏を目に押し当て、数を数えることに集中しながら呼吸を繰り返す。

(………大丈夫…)

沖田がいるから、笑える。

だいじょうぶ、ともう一度心で呟いて、千鶴は調理に取りかかった。













「沖田さん、起きてらっしゃいますか?」

障子を開ける前に呼びかける。大丈夫だよー、とのんびりした声が返ってきた。

失礼します、と告げてからスラリと障子を開けた。

本当に大人しくしていたらしく、布団の中で頁を繰っていた。

「美味しそうだね。ありがと、千鶴ちゃん」

笑って、沖田は盆を受け取った。

献立は味噌汁とご飯、煮魚と漬け物とお浸しだ。

鼻腔を擽る匂いに目を細めた。

「…もう大丈夫だよ」

言外にに出ていけと含め、冷たい瞳が優しさの紗をかけて千鶴を射抜く。

「他にもやること、あるんでしょ?」

駄目押しに千鶴は小さく頷き立ち上がった。

「召し上がったらお盆、そのままで構いませんから、お薬飲んでお休みになってくださいね」

失礼しますと告げて、出来るだけ目を合わせないようにして退室した。

(……嫌われたかなぁ)

自分で仕向けたんだけど、と嘲笑った。

その笑いが喉にかかり咳き込む。

どんなにおいより馴染んだ鉄錆の臭い。

眉をしかめ、手に染まった朱を手拭いで乱暴に拭き取る。

この仕事をしているから、長生きしたい訳ではない。

けれど、こんなただただ穀潰しになる予定ではなかった。

薄氷の上にいるような生き方だから、死はそれがいつか割れて溺れるように呆気ないものだと、思っていたのに。

剣が握れない剣客。笑わせる。

あの人の力に、剣になれない。

あのこを守ることができない。

――――眼裏に男装の少女を描く。

この新選組で、いっそ愚鈍なほどに優しい少女。

直接見たことはないが、潤んだ瞳が赤いことがある。

自信過剰ではなく、自分のせいだろうと思う。

泣かせてるのに、守りたいだなんてそれこそ愚鈍だ。

は、と嗤った。

鉄錆の臭いが鼻につく。

この病が空気感染すると知らない訳ではないだろう。

なのに、変わらず、泣いても傷ついてもまた近づく少女が、なによりこわい。

食事は半分程しか食べれなかった。














もどかしさややるせなさを抱えていても人は簡単に眠れるらしく、気がつけば残飯のある盆は下げられている。

障子に映る陽光は赤い。

太陽は見えないが、申の刻あたりか。

余り回らない頭で考える。

足音が聞こえ、障子に映り込んだ影でその足音が千鶴と気付く。

「あ、沖田さん。起きてらしたんですね」

お休み中だと思ってました、と挨拶なしに開けたことを詫びた。

「干したお布団があるので代えようと思いまして、」

「千鶴ちゃんさ、僕にかまうの止めなよ」

「…え……」

何も無かったみたいに、布団を抱えてきた千鶴に無性に苛立った。

「さっき、嫌な思いしたんじゃないの?僕に関わっても良いこと無いよ。不治の病ってことも、感染することも知ってるよね」

「……はい」

花が萎れるように落ち込んだ千鶴に、沖田はふんわりと笑った。

「だからね、あまり近づいちゃ、だめだよ」

子供に諭すように、優しく残酷に告げる。

その口調に子供返りしたかのように、千鶴はいやいやと首を振った。

「ぃ…いやです」

否を唱える千鶴に沖田は眉を寄せた。

「土方さんの命令だから?だったら僕が直談判するよ」

「た、確かに土方さんに言われましたけど、言われてなくても私がやることはおんなじです」

「ね、千鶴ちゃんはさ、選んで新選組に来たんじゃない。

ここにさえいなこれば男装もしないし、女の子として生きれる。

直ぐにそれを返せないけど…その時に労咳になんてなっててどうするの」

漆黒の水晶のように濡れた煌めきで真っ直ぐな瞳が沖田を映す。

「病気は怖くありません。…病気で沖田さんがいなくなるほうが、こわいんです。

争いがないときがくるなら…沖田さんにもいてほしいんです…」

最後の言葉が少し涙で掠れた。

慌てて拭おうとした千鶴から視線だけ外した。

まだその涙を自分は拭えない。

「そうだね、男装じゃなくてちゃんと女の子の着物を着てる千鶴ちゃんを見るまでは死ねないかなぁ」

痛いくらいに重い空気を払拭させるように、冗談のような口調で言った。

その台詞に応えるように、まだ涙は零れていたが頷いて笑った千鶴に、心のどこかが安堵した。

そして同じところが甘く痛む。

優しい娘だと知っているから、例えば他の隊士が同じ状況になっても同じだろうと思う。

けれど、心配して泣いて、自分の為に笑ってくれるから。

みっともなく、もっと心にかけてほしいと子供のような我が儘が擡げる。

「ねぇ千鶴ちゃん、今晩ここで寝ていきなよ」

「え…えぇ…?」

呆気に取られ、涙が止まった瞳に戸惑いが映る。

「病気のときって心細いんだよ。だから土方さんには内緒にして、さ」

千鶴が絶対に断れない誘い方と知った上で言った。

悪い男だ、と思う。

(僕以外のこんな男に引っかかっちゃ駄目だよ)

観念したように小さく頷いた千鶴を見ながら、そんなことを嘯く。

お誂え向きに布団はもう一組ある。

布団と布団の間の隙間は千鶴のほんの少しの抵抗。

片隅くらいには千鶴が眠れなくて寝不足になったらどうしようか、と心配はあったが日中の仕事疲れや泣き疲れたのか簡単に寝入った。

(これが下心ある男なら何されても文句言えないんだよ)

耳元で手を付いて千鶴を観る。

いや、下心があってもここまであどけなくされたら毒気が抜けるのかも知れない。

下心が無いとは言わないが、行動を起こす気はない。

千鶴は自分と一緒に未来をと望んでいる。

どういう意味合いかわからないが、叶わないだろうとぼんやり思う。

自分も願わない訳じゃないが、この不治の病が治ったなんて聞いたことがないし、自分にそんな奇跡を夢見る程頭は弱くない。

けれど、花の命くらいしかなくても、その間千鶴に嫌われたくない。

好いてくれたら、愛してくれたらと思うけれど、そうなれば千鶴が傷ついて泣くから、ただ嫌わないで。

(…なんて、僕らしくない)

自嘲しながら千鶴の掛布の中に腕を滑り込ませる。

緩く握られた千鶴の手に肉刺が出来た指を滑り込ませる。

と、赤子がそうするように沖田の指先をきゅうと握る。

驚いて、それから泣きそうな顔で破顔した。

長い睫に涙の雫をつけ眠る彼女よりも遥かに早く倒れる自分は、彼女に何をのこせるのだろうか。

きっと今よりも千鶴をすきになると確信めいた予感があるのに、どれだけのことを彼女に出来るだろう。

千鶴を起こさないよう、そっと近づいて、雫の残る睫に口接ける。

「―――本当は僕が、とけてしまうくらい幸せにしたかったんだよ」

暗い闇と冷たい月の光の中で、淡い色彩をもって詩のように紡がれた。

握った手のぬくもりだけ、おぼえていて


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