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オレオ

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2012.09.22 Sat 「 ディアーララバイコルダ3 天宮×かなで
天宮さんと小日向さんとねこ。
「小日向さんもかわいいのに」

(ねこ……)

受信されたメールを見ながらかなでは少しだけ困った。

猫はパンを食べるか?出されれば猫は食べるだろうが、人が食べるものを食べてはいけない筈だ。

困っていそうだからと堪えていたが、駄目だ、なんかおかしい。

かなでは隠すように緩んだ口許を抑えた。

(かわいい)


To:小日向 かなで

Sub:no title

わからないですけど、多分猫に人間のゴハンあげちゃ駄目ですよ(´・ω・`)

学院の猫なら引き取りに行きますね!

今どこにいますか?


パタンと携帯を畳んで、返信が来るまでの間に猫缶でも買おうとコンビニへ向かった。








天宮は返信されたメールを見て困った。

(……パン駄目なのか)

にー、とか細く鳴くから、お腹空いているんだろうと思ったのだが。

天宮は猫の前で屈んで、猫の頭を指先で撫でた。柔らかい。

「この僕が餌を持ってる訳ないだろう。

野良猫なら猫らしく鳥でも狩ればいいのに。

…僕が頭も性格も悪い人間だったらどうするんだ」

今はなんだか物騒だ。

猫と言えど安全ではない。多分。

応えるようにみゃーと鳴いたが、残念ながら何を言ってるかはわからない。

此方がいっていることも伝わっているのか甚だ疑問だ。

真っ直ぐ見上げてくる大きな瞳に少し絆され、天宮は眉間の皺を緩めた。

「安心してよ。

僕は性格は良くないけど頭は悪くないからわざわざ猫に何かしようと思わない。

それに小日向さんも来てくれる」

居場所は既に返信した。

猫を撒くことを諦め、芝生の上に腰を落ち着けた。

また小さな子猫の額を、いつもは鍵盤を叩く指で撫ぜた。

にゃーとまた鳴いて額を天宮の指にこすりつけた。

(…もうなついた)

野良なのにと天宮は目を丸くした。

星奏学院の猫なら人に慣れているからかも知れないとすぐに思い直す。

人懐こいところはかなでに似ている。

大きな瞳で見上げてじっと見上げて、人を疑うことを知らない。

頭の中の辞書にきっとないんだ。

「君も小日向さんも、そういうとこ、かわいい」

ガサガサっと派手な音がした方を見るとかなでが真っ赤な顔をしていた。

足下にはビニール袋と猫缶。

「な…っなな、に言って、…っ」

「何って…かわいいって言ったこと言ってる?」

「だっだから!」

真っ赤な顔をしながら目を泳がせ、観念したように袋と猫缶を拾い上げて、猫を挟んで
天宮の隣に座った。

「ふふっでも猫はかわいいですね」

「小日向さんもかわいいのに」

「あ…あまみやさんっ」

立てた膝付いた肘に頬杖ついて笑う天宮がなんだかにくたらしい。

「天宮さんのほうが可愛いです」

「僕が?まさか。女の子の君の方が可愛い」

目線を合わすことができなくて、かなでは猫を見る方に集中しながら口を開いた。

「さっきのメール。

餌持ってる訳ないって、優しくないって言ったのに結局餌あげようとしてたじゃないですか」

ふかふかして、小さくて大きな瞳。

子猫は無条件で可愛い。

けれど天宮は、天宮自身が何故か気付かないその優しさが愛しいくらい可愛い。

「よくわからないけど、それが可愛いって言うなら小日向さんのお蔭だよ」

「わたし?」

「この夏が来る前…君と会う前の僕なら子猫なんて気にも止めなかったよ」

後ろをちまちま歩く猫に気づいたかも怪しい。

仮に気づいてもああそう、と終わっていた。

「そう、ですか?」

子猫に視線を落とす。

お腹一杯になった猫は満足感一杯に寝入りかけている。

思わず手を伸ばしかけたが、起こしてはいけないとその手を膝の上に置いた。

人は多分、悪い方へとは簡単に変わってしまう。

けれど逆は難しい。

誰かに優しくしようとするのは、酷く不安定なものだから。

きっと天宮の優しさは天宮の元々の持ち物だ。

言っても信じないだろうから、もう言わないけど。

「小日向さん?」

「ふふ、なんでもないです。

ねぇ、私たちもちょっとお昼寝しませんか?」

「真夏の外で?」

「木陰だから気持ちよくない?」

見上げたかなでにつられ、天宮も見上げる。無数の濃緑の葉が折り重なった隙間に陽が零れる。

きらきらして、透明度の高い宝石が零れるように。

「そうだね。少しだけ寝ようか」

天宮の返答に満足そうに笑ったかなでは、猫のすぐ近くに顔を寄せ芝生の上に寝転がった。

閉じた瞼を縁取る睫が落とす影を見つめる。

かなでに意図的に恋をして、世界が広がった。

世界が煌めいた。

いつか自分が本物の恋ができるなら、彼女がいい。


溶け出しかけた想いの熱さだけを感じながら、天宮は横になった。

どうか午睡の夢でも会えますようにと、緩く握られたかなでの、自分より小さな手を握った。



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