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オレオ

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2012.09.22 Sat 「 silent loveコルダ3 八木沢×かなで
八木沢との待ち合わせ場所にかなでが知らない女の人といた八木沢。
「いえ、そっちじゃなくて…」

「宜しければ一緒に練習しませんか?」

そのメールが八木沢から届いて、以前メールが苦手と言っていたことも思い出して、かなでは口許を綻ばせた。

メールで文字だけのやりとりをするよりも声を聞きたくて、発信履歴から「八木沢さん」を探して発信ボタンを押した。

四コール目の途中で八木沢の声に変わる

「はい。小日向さん、今宜しかったのですか?」

「丁度一息ついていたところなんで。一緒に練習、させてください」

電話越しに、微笑して漏れた吐息が聞こえる。

「是非お願いします」

練習場所を山下公園に決めて、少し名残惜しさを感じながら終話ボタンを押した。

かなでは手鏡を出して髪と制服の身だしなみをチェックしてから、練習室を出た。

日差しは昨日と変わらず痛いくらい強いが、そんなこと気にしていられない。

急いで行きたいが、転ぶわけにはいかないのでいつもより少し大股で潮風吹く公園へ急ぐ。

もう行き慣れた道をじれた思いで歩く。

丁度木陰がかかるベンチで待ち合わせ。

暗黙の了解になった約束が嬉しい。

夏が終われば仙台に帰る人だとわかっているけど、まだ少し猶予がある。

考えない振りをしておく。

感傷的になっている間に待ち合わせ場所に到着し、生真面目すぎる八木沢は当然到着していた。

沸いたほんの少しのセンチメンタルを笑顔の中に溶け込ませ、八木沢を呼んだ。

「八木――さわ、さ……」

八木沢はひとりではなかった。

至誠館の人でもない。

星奏含め他の学校の生徒でもない。

一度一緒に中華街に行った、八木沢の恩師でもない。

しらない女の人と一緒だった。

潮風に靡く赤茶けた髪がきらきらと陽光に反射している。

立ち居振る舞いや、八木沢に向けられる笑い方が洗練されてこの港町に似合う。

体の線の細さや服装が憧れるくらい大人の女性らしくて、それが八木沢と似合うと、思わず思った。

ふとその女性と目があって、八木沢に一言声をかけた。

その声に示されるように八木沢も此方を向いた。

「あ、小日向さん、いらしたんですね」

大好きな柔らかい笑顔にいつもはつられて笑っていたが、今日はもう笑えない。

目頭の熱さを感じたと思ったら、八木沢の驚いた顔と、隣の女性の、何か言いたげな顔があった。

その変化に、自分の気持ちと表情に嘘がつけないかなでは、弁解することもそこから平静を装うこともできなくて逃げ出した。

「えっ小日向さん?!」

戸惑う八木沢の声に心の中で謝って、思いつくほうへ走った。

だが男性の、普段肺活量を鍛える為にジョギングをしている八木沢から逃げ切れる訳もなく、あっけなくかなでの腕は八木沢に捉えられた。

「やぎ、さ、……すみ…っませ、」

「ああ、喋らなくて良いですから、まずゆっくり息を整えてください」

呼吸三つで落ち着いた八木沢に言われ頷くだけにして、呼吸を戻した。

(なに、やってるんだろ……)

なんて言い訳をしよう。

だが今は口を開こうとすると泣いてしまう気がする。

一番聞きたいのはさっきのひととのことだ。

けれど聞いたら、やきもち妬いたと言っているようなものだ。

最初に口を開いたときの科白が浮かんでは消える。

最初の科白も、恋人だと言われたときの笑顔を受け止める自信もないまま、呼吸は楽になる。

タイムリミットがきてしまった。

「落ち着きましたか?」

「…はい、驚かせて…というか走らせてしまってすみません」

「僕は大丈夫ですよ。…どうかしましたか?」

かなではゆっくりと、一回深呼吸をした。

「邪魔をしてしまいました、よね」

八木沢の性格上、そうであっても是とは言わず困ったように笑うのだろうと思っていたが、八木沢は目を丸くしていた。

「邪魔だなんて…と言いますか、練習をお誘いしたのは僕ですから。

練習の邪魔というなら僕の方が…」

「いえ、そっちじゃなくて…」

そう捉えられるとは思っていなかったかなでは更に混乱した。

どうしよう。

「えぇっと、…さっきいた、女のひとといたのを邪魔したのかな、って…」

「は……」

八木沢はその返答を予想していなかったらしく、呆気にとられたような顔をして、それからいつもの、いつもより優しい笑顔を向けた。

「え?変なこと言いました?」

「ふふ…いいえ、すみません、気を遣って頂いたようなのに、笑ってはだめですね」

ですが、と八木沢は繋いだ。

「さっきの方は僕の恩師の…火原先生の後輩にあたる方ですよ」

「こう、はい…」

「はい。それから、火原先生のご友人の婚約者でもあります」

「こんやく…。………っ!」

その単語の意味するところがゆるゆると繋がり、かなでは二の句が継げなくなった。

人の婚約者と八木沢を勘違いしていたらしい。

「………ごめんなさい」

だって、とかなでは目を泳がせた。

恥ずかしすぎてどこをみていいかわからない。

気温と走ったことと、勘違いに気づいたことで顔に集まる熱のせいで思考が纏まらない。

「あのひとと並んでる八木沢さんが、大人のひとに見えて、…似合うなぁって思って…」

最後は俯いて消え入るように言った。

「それで走って逃げたのですか?」

こくん、と肯く。

「何故か聞いても、いいですか?」

「だ、だって……」

顔を更に朱に染め、かなでは声を詰まらせた。

八木沢の気配が柔らかく緩んだ。

「これ以上は苛めているみたいですね。すみませんでした。…小日向さん、練習しましょうか」

八木沢が作ってくれた逃げ道に甘えて、ヴァイオリンの準備を始める。

ただ練習をするだけ、だけれど。

まだ口に出すことができない想いも、音楽なら乗せれる気がして一音ずつ丁寧に紡ぐ。


恋心がどうか届きますように。



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