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オレオ

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2012.09.22 Sat 「 I know itコルダ 吉羅×香穂子
HP「オレオ」7万打お礼小説。バレンタイン話。
アンコールED前提2ED1年後。
(も~~っ普段何話してるっけ……!)


「うーん……」

パラ、と雑誌を捲りながら香穂子は唸った。

さっきからあまりこの光景は変わっていない。

強いて言えば体勢くらいだろうか。

今の時期、取り上げられている特集は殆どある一日のためのものだ。

「香ー穂ー?なーに見てるの?」

「うあ!菜美?」

天羽は香穂子の肩に顎を乗せたまま、香穂子の手元の雑誌を覗き込んだ。

「うん?バレンタイン特集?」

それに答えず、香穂子は体の重心を少し後ろにずらした。

「何かしたいんだけど……去年はアンサンブルで一杯一杯で買って終わらちゃったから」

「いや、まあ…あれはあれでなかなか無いバレンタインだけどね。

悪いけど正直くっつくとは思わなかったし」

「あ、あれは、どっちかっていうと両方とも私の為だったもん」

プレゼントはともかく、チョコまで買って済ませてしまったのは何となく、乙女として悔しいのだ。

「好みとかどうなの?」

「………うん」

「イメージ通りビターが好きーとか、意外と甘党、とか」

「………うん…」

「……香穂?」

訝って跳ね上がった天羽の声音に含まれているものを感じ、またそれが図星なだけに香穂子は机に突っ伏した。

「……あんまり知らない」

「ええ?」

香穂子が突っ伏す前に香穂子から離れた天羽は頓狂な声をあげた。

「だ、だって!あんまり会えないから…会えたらその時嬉しいので一杯になっちゃうんだもん…」

最後は消え入りそうな声で言った香穂子の額を天羽が指弾した。

「った!」

「なぁーに可愛いこと言ってんの!」

「か、かわ………?」

額を摩る香穂子を無視して、開いていた雑誌を閉じた。

「あんたがそうやって考えてあげたものを、喜ばない訳ないでしょ」

ね、と天羽が快活な笑顔を見せたところで、始業のチャイムが鳴った。

慌てて自分の教室へと戻った天羽を見送った香穂子は、ついと窓の外を見た。

校舎は凝った意匠の印象が強い割に、瀟酒な造りの窓枠の向こうに空と街並が続く。

その風景が広いだけに、自分が中に居る「学校」を意識した。

そして、その学校の理事長こそが、自分の恋人なのだ。















放課後、下校時間までヴァイオリンを練習したあと、香穂子は駅前通りへと来ていた。

まだこの季節、日が長い訳ではないが、この辺りは立ち並ぶ店の灯りでまだ明るい方だ。

洋服店やアクセサリー店、雑貨屋など、日用品を売っているような店までバレンタインコーナーが設けられ、店の趣旨に合わせて特別にラッピングされた商品が並んでいる。

ただ、恋人とバレンタインの可愛さが合わない。

予算の関係もあり、似合うに合わないだけで選べないのも辛い。

実際歩いて手に取って見てみたら何か違うかも、何か掘り出せるかもと思ったが、これでは雑誌を見ているときと変わらない。

否、ヴァイオリンを庇って歩いているのだから余計に辛いものがある。

(も~~っ普段何話してるっけ……!)

出かけるときはドライブすることが多いが、運転している人間に話しかけるのは憚られるし、話しても大概その時車の中でかけている音楽について話すことが一番多い気がする。

機嫌が良いときは色んなことを話してくれることもあるが。

(ん?あれ?)

香穂子は歩いていた石畳の歩行者の道路で止まった。

吉羅が気に入っていると話してくれた店に行った時。

車を運転している為飲んでいないが、料理を食べながらその料理にはどのワインが合う、という話をしていた。

飲酒経験が無い為ピンとこないまま終わってしまった、が。

(もしかしてお酒好き…かな……)

金澤と下校途中に会って、吉羅と三人でご飯を食べに連れて行って貰ったときに運転代行を頼んでまで飲んでいた、筈だ。

その後アンサンブルが続いた為、忘れていたが。

さっき少しだけ入った、落ち着いた雰囲気の雑貨店でリキュールが入ったチョコを売っていたのを思い出し、香穂子は踵を返した。

香穂子は数軒の店を戻って、落ち着いた色調で統一された雑貨屋に入った。

普段は菓子類を含めた飲食物は売っていないが、バレンタインとクリスマス時期だけ特別に販売しているらしい。

シンプルだが、凝ったデザインの雑貨と同じく、チョコの包装も黒の包装紙に赤や白など、数色の色違いのリボンがかかっているだけ。

だが、そのリボンが同色の糸で細かく装飾的に縫われているため凝った印象が残る。

リキュールが入ったチョコのサンプルと同じものを取り、軽く笑んだ。

吉羅が特別、なんてあのひとは知っている筈だ。

だから、今年はチョコだけにして。

来年のバレンタインまでに、沢山のことを、知りたい。

やっぱり少し情けない気はするが、来年は大学生だ。

今よりもっと、二人の時間だって作れる筈。

ふと、香穂子がすぐ後ろにたった気配に気づいた、一瞬後。

「高校生がアルコール成分が含有されたものを購入するのは教育者として頂けないな、日野くん」

「っきゃ……!」

耳のすぐ近くで、小さいけれどしっかりとその声が香穂子の耳に届いた。

「んな、き、吉羅さ……ッ」

顔を赤くして耳を押さえて呂律が回っていない香穂子の様子に満足したように、吉羅はゆっくりと口元に弧を張った。

教育者は女子生徒の耳元で囁くものではないが、頭に色んなものが回っている香穂子は、そんなこと気づかない。

こっそりとバレンタインにあげるチョコを選んでいたのに、あげる相手その人が今、ここにいる。

「な、なんでいるんですか!」

息巻いた香穂子に、何故か吉羅は嘆息した。

「日野くん、君はもう少し警戒、というものを覚えたほうがいい。

君に目を留めたのが私でなければ君は殺されていたかも知れないよ」

「………尾けていたんですか……」

下校終了からもう二時間弱だ。

その間、思考を締めていたのは吉羅暁彦。

当人が、その行動を一部始終見ていたのか。

香穂子は情けなくなるよりも、少し泣きたくなった。

吉羅は脱力しそうなのを、何とか店内である、という事実で保っていた香穂子の手の中にあるチョコレートの箱を取った。

「私は教育者だからね。そんな訳でこれを君に買わせる訳にはいかない」

「だ、だって……」

折角良いと思ったのに、と香穂子は少し前と違う意味で泣きたくなった。

微かに揺れる瞳で見上げる香穂子の頬を吉羅の大きな手が撫でた。

「では頑張って作ってみたらどうかね。

君の恋人は、君が思っているよりも甘いものが好きかも知れない。

それに、味云々ではなく、君が頑張って恋人の為に作ることに意義があるのだよ」

「は………」

揺れかけた大きな瞳が、一際大きく開かれた。

吉羅の笑みが、一際深くなる。

「もう用事はなくなったね。送るからもう帰りなさい」

それだけ言って、吉羅は香穂子に背を向けて歩いた。

きっと吉羅は香穂子がその場から動かない、なんてことは考えていない。

しない、けど。

(……悔しい)

吉羅についてわからないことばかりで、贈り物ひとつで悩んでいたのに、吉羅は自分がその背に絶対ついて行くことを知っている。

見ていないけれど、口を尖らせてみる。

そうやっても、嬉しくて嬉しくて、緩んでしまう頬は抑えられない。

距離が開き、それを埋める為に香穂子は小走りでその背を追いかけた。

香穂子が追い付く頃に、吉羅は助手席のドアを開けた。

香穂子が乗り込み、ドアを閉めて自分も運転席へ乗り込む。

シートベルトを香穂子に指示しながら自分も閉める。

キーを差し込んで回し、エンジンをかける

そして出発する、その前。

「さっき、君に「もう少し警戒しろ」言ったね」

「き、気をつけます……というか、そんなことするの吉羅さんだけですよ」

「性別と年齢と君の美醜をしっかり判断してから言いたまえ。……そうではない」

片手をハンドルにかけ、右手で香穂子の顎を掬った。

「私が私以外にそんなことはさせないから、やはり君は今のままでいたまえ」

「………っ」

何処から、と思うような自信満々な態度。

自分がわかりやすいから、とか、そういうことではないとふっと理解した。

吉羅が背を向けたまま確信を持って歩いたのは自信ではなく、知っているのだ。

自分が吉羅をどれだけすきか、を。

そして合理主義の彼に、そこまで言わせた自分が、どれだけ愛されてるかを、理解した。

柄じゃないなあ、と少し思うけれど、本当に自分が吉羅を想って何かをすることを喜んでくれる。

それだけ知っていれば、もう十分だ。

嬉しくて、鞄を抱きしめて顔をマフラーに埋めた。

「吉羅さん、楽しみにしててくださいね」

横を向けば吉羅の横顔が見える。

少し視線をあげれば、バックミラー越しに吉羅の表情が見える。

けれど、香穂子はカフラーに顔を埋め、目を閉じて言った。

「私の期待のハードルは高いから頑張りたまえ」

言って、返事がくるまでの短い間で、頭の中でリフレインした、低いけれど柔らかい声が、聞こえた。



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