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オレオ

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2012.09.22 Sat 「 優しくないひとの愛情表現コルダ 吉羅×香穂子
アンコール後の香穂子と吉羅理事長。
世間と乙女心と2人の折り合い。
「………そんなの、ずるいですよ…」


理事長室には本来理事長しか入らない。

今はその理事長と、理事長を来客用のソファに座り、じっとみつめる三年に進級した香穂子。

だが理事長は意に介することなくさくさくと仕事を進めている。

「………吉羅さん」

「なんだね」

「聞きたいことあるんですけど。ていうか前も聞いたんですけど」

言葉では答えはなかったが、視線で促され、香穂子は口を開いた。

「付き合ってるんですか、私と吉羅さん」

少し視線を上にやり、あの時かとばかりに再度仕事を始めた。

それに少し傷つきながらも答えを待った。

「………教職に就く者が生徒と恋仲になるのが世間では宜しくないことなのは知っているだろう」

「う……はい…」

溜め息混じりに言ったその科白の指すところに、香穂子は膝に手を置いて項垂れた。

香穂子にもわかってはいた。

それに吉羅は教職でも理事長なのだ。

公になればその地位だけに、中傷も非難も一入だろう。

だがそれでも、こうやって誰もいないときくらいと思ってしまうのが哀しい乙女心。

但しそこで喚くほど香穂子も自分本位ではない。

諦められるほど大人ではないだけだ。

膝に置いた手を見ていた香穂子は、香穂子が見るからに意気消沈しているのを見て微笑を浮かべた吉羅に気付かなかった。

「聞いていたか?」

「聞いてなかったように見えますか?」

じとりと恨めしげに見上げた香穂子に、吉羅は楽しげに笑った。

「私は世間体が宜しくないと言った。君がうなだれるほど法に触れている訳ではない」

「………意味が……」

ぱさりと書類を机の上に置き、香穂子の向かい側に脚を組んで座った。

「君が私に片想いしていれば問題はない」

一瞬ぽかんとした。

珍しく嬉しい言葉を聞けると萎れた乙女心が首を擡げたら、口説き文句のかわりにとんでもなく理不尽なことを聞いた。

「そんっ…なん……っ」

自分でもなにが言いたいか分からず断片的な科白、というよりも声が出た。

だがそれに満足したように吉羅は口許を弓張りに象った。

「………そんなの、狡いですよ…」

否定なんて出来ない。

支配者然とした態度と、そう思わせる強い意志を溶かし込んだ柘榴石のような瞳。

ほんの少し、垂らされた優しさや気遣いがとても好きで。

そしてそうやって、時折微笑を浮かべてくれるのが自分だけと知っているから、嘘でも「そんなことない」なんて言えない。

だがそれを素直に言える訳もなく、何か言いかけて口を結び、また言いかけてを繰り返す。

「………ふ…っ」

香穂子は暫くそうやっていたが、堪え切れず吉羅は喉を鳴らして笑った。

「~~っもうっ吉羅さん!」

怒ってみたが逆効果らしく、肩を小刻みに揺らしだした。

「ああ……全く私を楽しませるのは君だけだよ、色んな意味で」

笑いが治まりきらないながらに言われても、最早「色んな意味」が良いようには取れなかった。

「も……もう知りません!失礼しましたっ」

「まあ待ちたまえ」

立ち上がって二、三歩歩き出していた香穂子は、細められたまなざしと揃えられた指先で座っていたソファを勧められ、それに渋々従った。

「君が私に片想いしていたら問題無いと言ったね」

「ですねっ」

「逆も然りだ」

肘置きにゆったりとした動作で肘を付いて頬杖をついた。

「私が君に片想いしていても、然したる問題はない」

「………へ?」

「たまたまその矛先が同じ、なんてことも、まああるだろう」

悠然と、尊大ともいえる態度で微笑している目の前の男と、片想いという言葉のいじらしさが一切繋がらない。

「生徒が教育者に、教育者が生徒に恋をすることは何ら問題ない。違うかね」

瞳が楽しげに煌めく。

その煌めきを追いかけるのが精一杯で、いまいち理解まで届かない…が、質問の答えがこれだろうか。

「じゃ……じゃあ私のこと好き、なん、ですか?」

「どうだろうね。肯定はしないが否定もしないから好きに解釈すると良い」

「わ…かりました」

そのいつもより幾らか柔らかい声音が答えをくれているけれど、知らない振りをして、好き勝手に解釈して、胸にしまった。

おおっぴらに出来る関係ではないから、お互いの答えはお互いがそれぞれ持っていれば良い。

「私は仕事に戻る。君も勉学なり音楽なりに勤しんで来たまえ」

組んでいた脚を戻し、颯爽と立ち上がり重厚な意匠の机へ戻った。

が、その脚を途中で返し、香穂子が座るソファの脇へ立った。

足許は絨毯が敷かれているため、足音はない。

きょとんと吉羅を見上げる香穂子の顎を捕らえ、吉羅はその長躯を屈めた。

顎を捕らえられたことで自然に緩く開いた唇に、その薄い唇を合わせた。

有り得ないほど間近で、顎を軽く触れる指先よりも強く搦めとる柘榴石の双眸を縁取る睫毛が軽く伏せられ、震えるまで香穂子は状況が飲み込めなかった。

が、苦しくなる呼吸に追い立てられるように理解し、香穂子の瞳が動揺に揺れたのを見、吉羅は合わせた唇を離した。

「……は………駄目、なんじゃ、ないんですか…?」

「五月蠅い外野に拘らうのは非常に面倒だ。

だが言った筈だが?私は世間体は一向に気にしない」

ここに来て何度目になるかわからないが、香穂子は呆気に取られた。

何だか全部覆された気がする。

当の吉羅は言うと踵を返し、机へと戻った。

吉羅の科白の、意図する意味を噛み締めて、ゆっくり微笑んで香穂子は立ち上がった。

手を掛けたドアノブを回す前。

「また来ますね」

「好きにしたまえ」

パタンと、恐らくもう仕事に没頭し始めている想い人を慮って出来るだけ音を立てないよう閉めた。

ああ、もう。

先走った自分が悪いとはいえ、あんな言い方分かり辛過ぎる。

綻びそうになる頬を抑え、教室へと歩いた。目的はヴァイオリンと鞄。

正門前で弾いていたら、「偶然」出会った理事長に送って貰えるかも知れない。

緩む頬を抑えようとしていたが抑え切れず、香穂子は走り出した。



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