白凪さんとの合同企画。
ふ、と窓の外のグランドに視線を投げれば、毎時間のようにどちらかの科の何処かの学年の何処かのクラスが体育の授業をしている。
見つけたのは、只偶然、晴れやかな晴天につられて黄土の地面と淡青の空を見た時。
見慣れた茜色の髪が見えた気がして、空から地面へと視線を落とす。
この時間は、彼女のクラスが体育らしい。
良く見れば彼女の両脇には女の子。
その向かいには香穂子を合わせた女の子と同じ人数のクラスメイトの男。
男女問わず一分の差も付ける事無く同じ笑顔を振り撒いていた。
「………き、ゆ…、のき、柚木?」
担当教師の声で、ふと我に返った。
気付いた時にはペンを持つ手に必要以上の力が入っていた。
「……はい?」
「体調でも悪いか?」
その言葉で、自分が保健室に付き添わんと女子生徒が色めき立つ。
「いいえ、保健室に行くほどでは…すみません」
最早条件反射で作る笑顔で言うと無理するな、と付け加え授業が再開された。
そしてまた真っ直ぐに、目的の位置へと。
未だ彼女らのグループの談笑は続いている。
分け隔ての無い笑顔が、無性に腹立たしく感じた。
談笑して、香穂子と触れ合う肌や指先が、男とか女とか関係なく、鬱陶しい。
そうやってするのは自分だけであれば良いと願う。
腹立たしいなら見なければ良い、と頭の片隅の冷静な部分が酷く適切なアドバイスをするが、大部分がそうする事を許さない。
縛られたかのように首が、視線が動かない。
と。
ピーッと裂くように響く笛がグランドの生徒の談笑を強制終了させ、召集をかける。
その音に解かれるように体の強張りも、同時に一瞬にして消えた。
行かなければ、と香穂子を促し、一箇所へと集合し出す友人を先に行かせ、香穂子だけその場に残る。
(何をしてるんだあいつ……)
その瞬間、香穂子が空を仰いだ。
否、空では無い。
空を仰ぐにしては視線が低い。
他の理由付けが出来ないほど、しっかりと香穂子と視線がかち合う。
「……っ」
驚いて、声にならない声が洩れる。
偶然にしてはタイミングが良過ぎて、まるで心の中を見透かされた感覚に陥った。
ふわり、と、遠めにも分かるほど微笑を投げ、口の動きだけで何かを伝え、お辞儀すると先に行ってしまった友人を追いかけて走った。
本当に、驚いた。
笑顔を向けるのは自分だけで良いと思っていたとは云え、本当に一瞬でも向けるとは思わなかった。
本当に、静かに衝撃を受けた。
只腹立たしかった、その原因に。
本当は、受け入れている。
だが、つまらないプライドが、それを認めない。拒絶と言って良い。
だから。
(所有物(おもちゃ)を赤の他人に触られて、気分が悪いだけだ)
そう。
今はまだ、そのつまらないプライドの為に、気付かない振りを。
PR