白凪さんとの合同企画。
一戸建ての家が並ぶ住宅街で、一件の家の前で車を止めて凭れ掛かるようにして、腕に巻かずにいる腕時計を見る。
いつも会う交差点の場所と、香穂子の足の速さを考えるとそろそろ出てくる筈。
ポケットに仕舞い込んで、ドアを見れば丁度かちゃりと音を立ててそろりとドアが開いた。
「おはよう。さっさとドアを開けたら?」
ほんの少し開いたドアから赤毛と制服が見える。
「わっ本当に待ってたんですね」
観念して香穂子はドアを開け、門扉を開け放った。
「おれは言った事は実行するよ。それより挨拶」
「おはよーございます……」
優雅な動作で固まる香穂子の荷物を手から取り、空いてる手で柚木は車のドアを開けた。
「どうぞ?」
「失礼しまーす」
恐る恐る座る香穂子がおかしくて、くつりと喉を鳴らすように笑って軽く肩を押した。
こわばらせていた体はいとも簡単にシートへ倒れこんだ。
「図々し過ぎるよりは良いけど遠慮ばっかりも可愛くないぜ?」
「けっ、結構ですよ可愛くなくて!」
「ふぅん?」
髪の合間から覗くように見遣れば、シートに預けた状態で体を固める。
「いっ言った事は実行するって事は本当にあたしを潰すんですか?」
意を決したように切り出した香穂子に柚木は虚を突かれたが、すぐに笑みを作った。
すっと手を差し出してやると、香穂子はぴくん、と体を竦ませる。
そのまま流れるように頬へ指先を掠らせる。
「ひゃ……っ」
その反応に満足して、柚木は香穂子の髪を梳き始めた。
「っ、」
「寝癖」
「えっやだ嘘!」
「嘘」
体を引いて、香穂子は柚木が触っていた髪を撫でつけながら、顔を少し可哀相な程赤くした。
柚木は楽しげに笑いながらゆっくりとシートに体を埋める。
「潰して欲しい?」
「おっお手柔らかにお願いします……」
「へぇ?そう。まぁどっちも簡単だけどね」
言い終わった時に丁度車は正門前。
柚木は運転手がドアを開けようとしたのを少し待たせた。
「あの、柚木先輩?」
手招きして香穂子に近づくように促す。
きょとんとしたものの、疑いなく近づく香穂子に柚木は笑いを噛み殺した。
――――――男に、こんな密室で近づいちゃいけない事くらい、先輩として教えてやろうか。
「なん、」
ですか、と続ける香穂子の科白は腰を抱かれた事が一瞬呑み込めず、息を呑む。
腰を掴んで逃げ場の無い香穂子に少しだけ体重をかけて首筋に顔を埋める。
「楽しませてくれたら、生かしといてあげるよ?」
首筋に唇を掠らせて、吐息を当てる。
二人しかいない車内で、香穂子にだけ聞こえる大きさ。
腰の砕けた香穂子ににこりと笑うと、鞄を香穂子に膝の上に乗せて校門を歩き出す。
「ず……る…っ」
漸く紡ぎ出せた声は罵声にすらならない。
そして一抹の疑問。
腰を立てる状態にするのに、一時間目は間に合うのだろうか。
PR